古古古古古米である政府備蓄米を100%使用して、うまい酒は造れるのか?
醸造の選択肢の幅を広げるための1本。
昨年、米不足の世情の中で放出された政府備蓄米。
食用米であり、数年保管されたいわゆる〈古米〉に類されるお米を用いて、うまい酒は造れるのか?
一般的には食味がよくない・扱いづらいと言われるお米を原料として高品質なお酒を造ることで、
日本酒業界の固定化された概念を取り払い、選択肢の幅を広げていきたいという思いから、
この研究醸造をするに至りました。
なぜ「備蓄米」でお酒を造るのか?
先日リリースした特定米穀を使用したお酒〈一石(いっせき)〉でもお話しましたが、
土田酒造では「どんなお米でもうまい酒は造れる」という信念のもとに、酒米を使用せず食べるお米を使ったり、
米を多く磨くということをしなくても高品質のお酒を造れる、という
日本酒の可能性を広げるための挑戦を続けております。
特定米穀(くず米)でお酒を造ることはその最たるものとお伝えしましたが、
備蓄米での酒造りも、それと同等に価値のあるものと考えております。
今回備蓄米でお酒を造るにあたり、
仕入れることが叶ったのは令和2年度産のお米でした。
仕込みをしたのが令和7年度のため、約5年前のお米ということになります。
お米は、新米が出だす頃に前年度に収穫されたお米を「古米」と呼び、
5年前ともなると「古古古古古米」なんて強調して言われることもあるほどです。
今回の研究醸造の主題は分かりやすく「備蓄米」としていますが、
その核心は「古米でうまい酒を造ること」であると言えます。
研究醸造で見えたもの
古米である備蓄米を使用して造るお酒。
せっかくならばイメージと正反対であろう、お酒を飲まれる多くの方が一般的に「良い」と感じるような
吟醸系の綺麗な味わいにしよう、と目標を定めました。
しかし、研究を進める中で大きな課題が浮上します。
備蓄米から、特に蒸した際にまるで蝋燭(ろうそく)のような独特の匂いが発生したのです。
この匂いの正体は、お米に含まれる油分が酸化した際に出る「古米臭」と呼ばれる特有のものでした。
このまま仕込めば、最終的なお酒にもその匂いが持ち込まれ、酵母由来の吟醸香の邪魔にもなってしまいます。
酸化という現象は、対象物が空気に触れることで起こります。
そのため、理屈上では空気に触れているお米の外周を削れば削るほど、
酸化した「古米臭」の原因箇所は取り除けることになります。
ですが、土田酒造には「農家さんが育てたお米を少しでも多く活用したい」という信念があり、
造りの多くにあえて食用米と同じ1割しか磨かない「精米歩合90%」を採用してきました。
もちろん、今回の研究醸造でも精米歩合は90%です。
精米歩合は変えず、いかにしてこの「古米臭」を解決するか。
研究の末、その課題を乗り越える術が見えてきました。
お米の蒸し方を土田酒造従来のやり方と変えることで、驚くほど「古米臭」を取り除くことに成功したのです。
その結果、見事に匂いを醪に持ち込まず、
綺麗な味わいのお酒が出来上がりました!
どんな味わい?
当初の目標通り、綺麗な吟醸系の味わいにすることができました。
しっかりとした旨味と、バナナやメロンのような豊かな吟醸香。
冷酒で飲むと格別の味わいです。
面白いことに、同じ信念、同じ吟醸系の味わいを目指した
〈一石(いっせき)〉ともまた違った味わいとなっています。
ぜひ飲み比べもお楽しみいただきたいと思っております!
品質の証明
国から備蓄米を買い取るにあたり、
最低でも10tから購入する必要がありました。
この「研究醸造35 備蓄米」の仕込みで使用した量はおよそ700kg。
そのほかのお米については、本研究醸造にて品質に全く問題ないお酒を造ることができると確認ができたため、
他の酒造りにも活用していきます。
これは、前回の〈一石(いっせき)〉同様、新年のご挨拶にて公式SNSでも発信しています。
当蔵としてはまったく後ろめたくないことではありますが、
やはり弊社のお酒を飲んでくださる方の中には品質上の心配をされる声もあるかと思っております。
しかし、研究醸造があることで、
「100%使用したお酒でもこのように旨い酒を造ることができていますので、
そのほかのお酒の品質においても全く問題ございません」とご安心いただける材料にもなると考えています。
| 「R7BY研究醸造35 備蓄米」 ・原料米 :政府備蓄米(国産) ・精米歩合:90% ・仕込み水:武尊連峰伏流水(関東名水百選) ・麹歩合 :35.0% ・種麹 :白夜、焼酎用黄麹 ・酒母製法:生酛 ・酵母 :土田IDO酵母 ・アルコール度数:14%(原酒) ・グルコース:2.9 ・日本酒度 :−10.9 ・酸度 :1.7 ・アミノ酸 :1.4 ・火入れ :1回火入れ ・保管方法 :直射日光を避け常温にて保管 ※記載されている原材料のみ使用。 ラベル表示義務がない添加物も不使用です。 |