研究醸造32 クドい シン・ツチダ

土田酒造の新しい挑戦:60時間麹の特別なお酒

土田酒造では、日本酒造りの伝統的な枠を超えた新しい試みを行いました。
今回は、麹の製造時間を革新的に60時間に延長し、これまでにない特別な麹を生み出しました。
この麹は、酒蔵内で空中に胞子が飛び交い、霞のような幻想的な景色を創り出しました。

この麹を使用して醸造したお酒は、味わいが濃厚でありながら驚くほど飲みやすく、長い余韻が特徴です。
合う料理は、群馬名物の焼きまんじゅうやビーフシチューなど濃厚な味わいのものとの相性が抜群です。

土田酒造の長年の経験と革新的な技術の融合により生まれた、この特別なお酒をぜひ一度ご堪能ください。
革新と伝統が交わる、まさに一度飲む価値のある一滴です。

【秘密のエピソード】
麹を造りおえて混ぜてみると、空間がもやもやと霞んだ。

麹は、アスペルギルス属という、カビの一種です。
麹は成長してくると、次の子孫を残すため、胞子をつくります。
その胞子が空中に飛び立って、もやもやとした霞をつくっていたのでした。

酒造りは、麹が命。
土田酒造では、味わいはあるが、飲むときは軽やかに。
というお酒を目指して、麹を造る時間は、短くしていました。

酒造りの教科書などに載ってる、一般的な麹の造り方は48時間とされています。
土田酒造では42時間や、33時間といった短めに造っています。
なぜかといいますと、麹菌が違うためです。
通常の酒造りではあまり使われていない、強い力をもっている麹菌を使っているからです。
強い力とは、お米を溶かす、酵素の力のことです。
強い力をもっているため、あまり長く麹を造ると、カビっぽさが目立ち、お酒の味が重たくなるためです。

なぜこのような麹菌を使っているかと言いますと、原料のお米が違うからです。
土田酒造は、酒米を使いません。酒米は、お酒の味になりやすいお米です。
食べるお米は、なかなか味わいが出にくいためです。
また、90%精米と、食べるお米と同じような削りのお酒を多く造っているのもあります。
お米がさらに硬くなり、お酒の味が出にくいのです。

そのため、よく使われている一般的な麹菌ですと、酵素の力が足らず、味わいが出にくいためです。
食べるお米でも、味見のうすい綺麗なお酒にするならばそういった麹でも良いのですが、土田酒造では、お米の味わいを出すことを目指しているので、酵素の力が強いのを使っております。

背景の説明が長くなりましたが、酵素の力が強い麹菌で、今までは麹を造る時間を短くしてきました。
長い時間をかけて造れば、重たくて飲みにくくなると思い、避けてきました。
しかし、実際はどうなるかはわかっていません。
そこで、今回の研究醸造は、麹を長くしてみたらどうなるのか?をポイントにおきました。
新たな発見があり、また未知のお酒を造り出すための武器になるかもしれない。
または、やっぱり長くしてはダメだよね。となるかもしれない。
それを確かめたかったのです。

どうせやるなら、中途半端な時間にせず、思い切って60時間かけて造ってみました。
できた麹は、緑色の花が咲いてました。

麹を出す時に、蔵人は、
「こんな麹でお酒がどうなってしまうのか?」
「すごい、見たことないのができた。」
「お酒も緑色になるのかも?というくらい麹は緑色になっていた。」
そして、かき混ぜると胞子が飛び立ち、冒頭の、部屋の空間が霞むようになりました。
味噌や醤油の麹では聞いたことあったのですが、実際に見たのは初めてです。

これはきっと、すごい酵素の力をもつ麹になったに違いない。
誰もが確信しました。
しかし、麹の力の数値(力価)を調べると、こんなものかという数値でした。
いつもより、少し高いかな。くらいだったので。
おそらく、生物的に酵素を造る量は一定まで増えると頭打ちになるのではとわかりました。

それなので、思っていたよりお米が溶けなかったのです。
お酒の発酵経過も、普段のとあまり変わらなかった印象だそうです。
ただ、酵素が多いので、生の熟成期間のときに、生老の香りが出るのはいつものお酒より早く、熟成も早かったのです。
色は濃かったのですが、色のわりには香りがうわっとしたことはありません。

検証の結果としては、60時間はさすがにやりすぎだし、力の数値的には頭打ちになるので、お米を溶かすためだけなら時間の調整は必要。
複雑な味を出したいとか、独特な色や香りを出したいなら、特殊なお酒を造る手法としては使えることがわかりました。
一見すると、この挑戦に何の意味があるかは疑問に思われるかもしれません。
しかし、机上でわかっていても、誰も試していないので、実際はわからない。
土田酒造だからこそできる挑戦だと思っております。

この挑戦が、いつか今後のお酒に影響し、この挑戦があったからこそ、また日本酒の未来が切り開かれたよね。
となることを、確信しております。
皆様と、その未来に共感ができる日がきますこと楽しみにしております。

最後に、杜氏の星野からの解説動画もありますので、ぜひご覧ください。

「クドい シン・ツチダ」
・原料米 :群馬県産 あさひの夢
・精米歩合:90%
・仕込み水:武尊連峰伏流水(関東名水百選)
・麹歩合 :35%
・種麹  :焼酎用黄麹
・酒母製法:生酛
・酵母  :酵母無添加(蔵付き酵母)
・アルコール度数:16.1%(原酒)
・グルコース:4.2
・日本酒度 :−20.0
・酸度   :3.7
・アミノ酸 :2.9
・火入れ  :1回(瓶詰め時)
・保管方法 :常温保管
※記載されている原材料のみ使用。
ラベル表示義務がない添加物も不使用です。

 

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