「お願いだからお酒になってください」土田 はつしぼりichi 2023

今年の はつしぼり。
「お願いだからお酒になってください」
蔵人たちは、切実な心境で臨んでいました。

まるでドラマのような展開がおきた誕生秘話も載せておりますので、最後までぜひご覧ください。

この、土田 はつしぼり ichiを、端的にご紹介しますと。

 

限定生産の特別さ

土田酒造が、今年酒造りを開始して、1番最初に搾ったお酒。
冬限定で、今しか飲めない希少価値の高いお酒です。

味わいの特徴

甘酸っぱくてフレッシュな口当たりが特徴で、アルコール度数が13%と低いため、日本酒初心者から熟練者まで楽しめます。

料理との相性

やわらかい口当たりなので様々な料理に合います。
特に湯豆腐や、白身魚のカルパッチョや、カツオのたたき。
チキンカツや、牡蠣フライ。
甘酸っぱいフルーツや、デザートなどと相性が良いです。

蔵人の情熱

なにより、このお酒は、杜氏と蔵人たちの情熱の結晶であります。
昨年の挑戦を乗り越えた結果として、生酛造りの伝統技術と革新的な方法を融合させたお酒です。
誕生までの、秘密のエピソードを綴りましたので、ぜひご覧ください。

【今年のはつしぼりが生まれるまでの、秘密のエピソード】
杜氏の星野は、今年の酒造りに向けて「お願いだからお酒になってください」という切実な心境で臨んでいました。
去年の失敗が彼の心に重くのしかかっていたのです。

彼は蔵人たちと共に、夏の期間ずっと対策を練って過ごしていました。
蔵人たちの目標は明確です。
どうしても、最初のはつしぼりを失敗させるわけにはいかない。

考案した対策は二つ。
一つは、添を二日間踊りにすること。
もう一つは、添に使用する水の量を減らすこと。

これらの対策により、微生物が生きられる空間を狭め、酵母を大量に増やし、他の微生物の侵入を防ぐことを考えたのです。
そして、次のフェーズである、「仲」「留」と移ったときにも、酵母が多くいるので、より安全に造れるようになります。
去年は、酵母が増えておらず、その隙を狙って他の微生物が増えてしまったのではないか。という推測からの対策でした。

仕込みが変わると味も変わるので、その対策も考えていました。
酵母が増えるので、糖分を早く消費し、味の薄い酒になる恐れがあるからです。
そのため、酵母の活動を緩やかにするため、温度をある程度下げて発酵させることを決めていました。

しかし、神様は彼らに新たな試練を与えるのです。
またもやアクシデントが発生しました。

生酛造りの重要な要素である乳酸菌の立ち上がりが遅れたのです。
そのため、酒母の酸度が予定よりも1/3も低かったのです。
生酛は、乳酸菌が生み出す酸がバリアとなり、他の微生物を寄せ付けないという手法です。
酸が足らなければ、次のステップで問題が発生する可能性が高まります。
おそらくは、掃除がうまくなり、より住み着いている乳酸菌が足りなくなってしまったのです。

星野は、迅速に対応策を考えました。
乳酸を入れればすぐに解決できるのですが、うちは添加物を入れないと決めているので、この手法は取れない。
そこで、白麹を造り、添に投入という大胆な決断を下しました。
白麹は黄麹よりも強い酸を作り出すため、これがバリアとなるはず。という目算でした。
味わいを出すための白麹は使ってきました。
しかし、バリアを作るために使用するのは、星野にとって初めての経験であり、成功する保証はありませんでした。

更に、試練は重なるものです。
仲と留の麹の育成に問題が発覚しました。
麹の力価(お米を溶かす能力)が予想よりも低く、お米が十分に溶けない可能性が強くなったのです。
どうやら、麹の種を振る機械がうまく動作してなかったようなのです。
麹の力価が弱いと、お米が溶けないので、甘みが出なくなってしまうので、当初狙った味わいには程遠くなります。
添加物である酵素剤を使えばお米を溶かして甘くなるので楽なのですが、これもうちは入れないことを決めていました。

通常なら追加で麹を造り入れるのですが、今回は異なるアプローチを選びました。
麹を追加せず、代わりに発酵温度を極端に下げることで、酵母の成長を抑える戦略を取ったのです。
なぜなら、麹を入れると、どうしても他の味が出てしまい、フレッシュというよりは重たくなることが予想されたからです。
その代わり、発酵の温度を下げれば、酵母の活動が弱まり、エサである糖分の消費を抑え、甘さを残すことができるのでは、という考えからの決断でした。
醪になってから、4日目にはもう温度を下げだして、12日目には思い切って、2℃代まで下げる。
そして、お酒を搾る25日目まで、ずっとこの低温でひっぱりました。

この温度にすることはとても勇気がいります。
なぜなら、低温にしすぎると酵母は死滅すると言われているからです。

しかし、生酛の酵母は強い。
いままでやってき経験から、この温度でもお酒になるはずだと思ってました。
その想いが通じて、このような低温状態でも、驚くべきことに、97.2%の酵母が生き残っていました。
星野と蔵人たちは、昔の人々が築いた日本酒の醸造技術の素晴らしさを改めて実感しました。

星野はこう言っておりました。
「乳酸菌がほとんど立ち上がっていないのでこれは生酛か?というところはある。
ギリギリ私の中の酒造技術の引き出しにあった使った事の無い巻き物を何とか引っ張り出してきて、手探りでやってみた、くらいの感覚です。
迷う時間は無かったし、決めないとみんな動けないし、決断するしか無かった感じです。
挑戦したくてしたわけでもなく、未熟さ故の結果だと思っていて、悪い事だとは思っていませんが自分の技術的未熟さを痛感しています。
おれ酒造り下手くそだなーくっそーって感じです。」

「お願いだからお酒になってください。」という当初の目的は、達成することができました。
しかし、土田酒造の蔵人たちは、これだけでは満足せず、また夏の期間、来年のはつしぼりの対策を、考え抜くと思います。

自然の微生物と対話するお酒だからこを、お酒ひとつひとつにこのようなドラマがあります。
蔵人たちの情熱と努力によって、土田酒造のお酒は数々のドラマを生み続けることになりますので、今後ともどうぞよろしくお願いします。

「土田 はつしぼりichi 2023」
・原料米 :群馬県産 あさひの夢
・精米歩合:90%
・仕込み水:武尊連峰伏流水(関東名水百選)
・麹歩合 :40%
・種麹  :焼酎用黄麹・焼酎用白麹・白夜
・酒母製法:生酛
・酵母  :協会701号
・アルコール度数:13.2%(原酒)
・グルコース:2.3
・日本酒度 :−12.4
・酸度   :2.3
・アミノ酸 :1.4
・火入れ  :1回(瓶詰め時)
・保管方法 :要冷蔵
※記載されている原材料のみ使用。
ラベル表示義務がない添加物も不使用です。

 

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